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福山大学

「コミュ力」は大学生の学びと将来にわたるつながりを生む。

会社名

福山大学

受講者・チーム

キャリアデザインゼミ

会社規模

  • 1000名以上

利用サービス

PEER+(ピアプラス)(40名)

受講生インタビュー

「コミュ力」は大学生の学びと将来にわたるつながりを生む。

ピアコーチングによる「コミュ力向上プロジェクト」

2024/7/22

多くのテクノロジーの登場や社会の変化を受け、Z世代におけるコミュニケーションのあり方も多様化しています。そんな中、広島県の福山大学でキャリアデザインに関心を持つ学生が集まる自主ゼミである「キャリアデザインゼミ」で、2023年の4月〜10月の半年間、学生どうしが縦・横・斜めのつながりで相互にコーチングをしあう「ピアコーチング」の取り組みが実践されました。 その学びを振り返るための合宿の場で、キャリアデザインゼミの主催者である前田先生、ピアコーチングのプロジェクトに意義を感じて共にプロジェクトに取り組んでくださった内垣戸先生、大学4年生で、ゼミのリーダーであもる藤本さんに、今回の取り組みの背景や意義、ピアコーチングの可能性についてお話いただきました。

期待

●互いに支え合い、刺激しあえるコミュニケーションを活発にしたい
●コミュニケーションの経験値を高める機会を増やしたい
●ピアコーチングを通じて、ゼミ生どうしのコミュニケーションに変化を起こしたい

効果

●他のメンバーに対する関心や、コミュニケーションも生まれてきた
●考えを言語化できるメンバーが増えた
●聴いてもらうことで話す力が増し、メタ認知や建設的に考える力の育成につながった
●聴くことや問いかけたりするスキルが身についた

    ピアプラスサービスサイト

    集まることで仲間に出会えて協力しあって、成功体験が生まれるといい

    ーピアコーチングに取り組んでくださったキャリアデザインゼミとは、どんなゼミなんでしょうか

    前田 吉広(以下、前田)先生

    大学生と関わっていると、入学したときには成長したいと思って期待を持っていたような子たちが、4年間の中で諦めてしまったり挫けてしまったりということを見ることも多くて、残念な気持ちだったんですよね。地方大学って、よくも悪くも「志望度合い」で言えば高い人もいれば低い人もいる。大学全体としてはチャレンジしていくような子ばかりじゃなかったとしても、「成長したいと思っている人が、学科を超えて集まれたらいいな」という思いから2015年にスタートしました。

    集まることで仲間に出会えて協力し合って、成功体験が生まれるといい。それを見た他のメンバーも「自分達にも可能性があるんじゃないか」と思えるようになればいいと思っています。

    具体的な活動としては、年に1回行われる「社会人基礎力育成グランプリ」への挑戦や、地元の市役所や青年会議所との共同プロジェクト、他の大学の学生との交流などがあります。目標を掲げながら、地元ともつながっていくような活動をしていますね。

    ー藤本さんを含むゼミの学生は「社会人基礎力育成グランプリ」で昨年全国優勝もされましたよね。全国にたくさんの大学がある中で本当に素晴らしい成果だと思うのですが、何が優勝を導いたのでしょうか。

    前田先生

    教員が首を突っ込みすぎず、スタートから何をやるかを自分達で決めてもらうことを大切にしてきました。自分達で決めたことだから夢中になれると思うので。何年かチャレンジしてきた中でも今年優勝できたのは、地域の人を巻き込みながら、応援してもらう形で主体的に取り組めたからだと思います。実際、楽しんでいるのが伝わるようなプレゼンでした。

    ー内垣戸先生からは、このゼミの活動はどう見えていますか?

    内垣戸 貴之(以下、内垣戸)先生

    うちは「地方のいち大学」なので、のんびりしている学生も多くて、外に目を向ける機会が少ないんです。問題意識を持ってみんなで取り組むようなことは、思った以上に難しいことです。チャレンジングな課題に取り組んで切磋琢磨して鍛えられたり、というのを外から見ていて、前田先生すごいな、と思っていますね。

    向き合いながら話し合う前田先生と内垣戸先生の写真

    ピアコーチングを通じたコミュニケーションで、人と「つながる」体験を

    ー今回、ピアコーチングに取り組もうと思ったことには、どんな背景があったんですか?

    前田先生

    うちのゼミには本当に素直で穏やかで優しい子が集まってくれています。その分、思いはあってもなかなか行動できない、という子も多いんですよね。興味を持って集まってきても、なかなか自分から動け出せない。そんなとき、お互いに支え合えたり、刺激をしあえるコミュニケーションが活発になるといいな、と思ったんです。

    内垣戸先生

    うちの学生って、多くが自分のことを「コミュ障なんです」って言うんですよね。実態として個々の学生のその認識が正しいかはさておき、コミュニケーションに苦手意識を持っている学生は多いですし、コロナも挟んで、コミュニケーションの経験値を高める機会が少なかったことも間違いないと思います。ピアコーチングは、問いかけを通じて「言語化」する体験ですよね。普通にそれをやろうとすると難しいけれど、今回の仕組みにはその方法論がパッケージ化されていて、振り返りのトリガーが生まれ、発問もしやすい仕組みになっていた。無理矢理にでも言葉にしたり、人の話を聴く体験は、良いトレーニングになるのでは、と思いました。

    ゼミメンバーの意見を書いた付箋が貼ってあるホワイトボードの写真

    ー私も合宿に参加させていただいて学生とお話をしていて印象的だったのが「飲み会はあまりしない、誘われたら行くけど、自分から声をかけるのは怖いような感覚もある」という言葉でした。「したい気持ちはある」でも「人を巻き込むのが怖い」ような感覚もお持ちなのでしょうか。

    前田先生

    それはありますね。人とつながることのリスクやコストも感じているのかもしれません。好きな人とは密につながりたいけど、会いたくない人や、行くことによって無駄になる可能性があるようなことは避けたい、という感じもあります。集団行動を強制されることを苦痛として感じるような子もいたりはしますね。

    ーそのほかには、ピアコーチングという選択肢に、どんな期待がありましたか?

    前田先生

    キャリアデザインゼミには40名強のメンバーがいますが、ただ所属してそこにいるだけという状態から、一緒に関わり合いながら何かをする仲間になってほしいな、という思いがありました。話しかけるのが苦手な子も多い中で、顔は知ってるけど深い話ができていない、という子に対して、聴く・問いかける・話すのコミュニケーションを実践して、自己開示ができるようになったり、同じような思いを持ってるんだなと共通点を見つけることができて、仲間になる、一緒にやる、につながってくれるといいいなと。

    藤本 悠太(以下、藤本)さん

    私はゼミのリーダーとしてこのゼミに関わってきました。もう卒業する代ですが、ゼミ生が引き継ぎに不安を持っている、という状況もあったので、ピアコーチングを通じて、ゼミ生どうしのコミュニケーションを生み出したり、深いコミュニケーションが生まれる機会になって、新たな変化が起こってほしかったんです。

    コミュニケーションのワークに取り組むゼミメンバーの写真

    ー今回は「コミュ力向上プロジェクト」として、四半期を一区切りとして6回のピアコーチングを、ガイドに沿って実践しながらコーチングを学んでいただきました。

    前田先生

    就職活動への関心もあるので、学生の中で話すのが苦手、というのには、課題意識を持っている子は多いんです。ピアコーチングを実施する中で、定期的にペアになって聞かなきゃいけない、この時間になったらその人の話す時間で、自分の質問力がなくてもガイドに沿ってこの順番にやってみればいい、というのは、不安なく取り組める仕組みだなと思いました。

    相手を深く知ることで、仲間になれる

    ー実際にピアコーチングをやってみて、どうでしたか?

    前田先生

    マッチングしたピアどうしの仲はよくなりましたね。気軽に話せる関係ができたり、以前と比べると他のメンバーに対する関心や、コミュニケーションも生まれてきたように思います。

    前回の合宿と今回の合宿を比較すると、前は先輩が準備して、先輩が動いていても1年生は何をしていいかわからない、みたいな状況がありましたが、今回は1年生も主体的に行動していて、質問があったら先輩たちに話したりもできていました。

    考えていることをちゃんと伝えたり、共有したりできるようになっているのも見ていて伝わってきます。以前はすごくサポートが必要だったところが、メンバーどうしコミュニケーションが取れる状態になっていると感じますね。

    屋外で向き合いながら座り話し合う内垣戸先生と前田先生の写真
    内垣戸先生

    ワークショップをしていても、考えを言語化できる子が増えている感じはあります。1年生でもこんなに話せるんだな、と思いながら見ていました。自己認識としての「コミュ障」を脱していくことについてはこれからなんだと思いますが、コミュニケーション全般としての地力は育っているように思います。

    データを見ていても、話を聴くことのトレーニングができている、特に話を聴くことの意義を体感しているという感じがしますね。そして聴いてもらうことで話すことができるようになる。そこからメタ認知や建設的に考える力の育成につながっていくだろうな、と期待しています。

    藤本さん

    自分自身は、聴くことや問いかけたりするスキルが身についたのは実感しています。相手のことを深く知ることができたり、そこから自分自身の気づきを得られるようなこともありました。今まではうわっつらの会話が多かったところから、ピアコーチングを通じて、話したことのない過去を振り返ってもらったり、成功体験を聴いたり、生い立ちを聴いたりして、だからゼミに入ったんだね、というような会話も楽しかったですし、その人の夢や本質的なことを引き出せたときには嬉しかった。

    相手を深く知ることでもっとこうしたいという気づきを得たり、仲間になれる感じがありました。

    ピアコーチングだからこそ話せたことがたくさんありましたし、後輩が自分を知る、自分が後輩を知る、ということもできました。ゼミの変化としても、いつもの年と比べると後輩が引き継ぐ体制ができている、と感じますし、主体性・行動力が高まってきたと感じます。イベントに呼びかけたときにも出てきてくれるようになったり、自主ゼミらしい感じの基礎ができつつあると感じています。

    つながりとコミュ力が、大学生活を豊かにする

    大学の構内を歩くゼミメンバーの写真

    ー合宿の中でも、わたしのところに何人もの学生が「質問」をしにきてくれました。とっても良い質問も多くて、すごいな、と思っていました。問いかける力もひとつの成果なのかな、と感じましたが、教育現場において、ピアコーチングの可能性はどんなところに感じられますか?

    前田先生

    教員が学生にどんなに伝えても伝わらないことってあるんですよね。でも、学生同士で伝えあったり、刺激しあったり、斜めや先輩との関係の中からだと学べることはあるんだと思います。今回はOBもサポートに入ってくれたんですが、OB/OGなどの先輩とのつながりを仕組みとしてできるようなものも生まれると嬉しいですね。同窓会組織などの金銭的サポートというだけでなく、もっと人を育てる・活躍するところまでをサポートするような、先輩と後輩をうまく繋げていくような仕組みをつくりたいと思います。

    地方の大学だからこそ、そうしたつながりの意義も大きく、良い事例になっていくといいですね。

    内垣戸先生

    大学は成長のきっかけやエンジンとなる機会が陰に陽に生まれる場所ですが、それはあくまで機会にすぎません。かといっていきなりどっぷり関わることにも躊躇があって当然です。ちょっと近くで見てみようかなとか、関わっている人に話を聞いてみようかなといったような、「話す」「問いかける」「関わり合う」といったスキルをもって機会という種に水がまかれて芽吹き始める。このプロセスはピアコーチングで学んでいるコミュ力そのものと言っていいように思います。そして、コミュ力が鍛えられれば、学びのチャンスをたくさん得ることにもなり、結果としてたいていの力もついていくことになる気がするんです。

    キャリアデザインゼミで求めているリーダーシップについても、自分が理想とするリーダシップ像を形作るためには、先輩・後輩とのコミュニケーションの中で像を成熟させていかなければ独りよがりなものなってしまうかもしれません。なんだかんだ「コミュ力」って効いてきますよね。

    ゼミメンバーの意見が貼られた紙が置かれた机の写真

    ー前田先生の「つながりをつくる」という観点、内垣戸先生の「スキルを高める」という観点、このふたつがピアコーチングの実践の肝ですね。教育現場において、ピアコーチングが浸透していく上で乗り越えるべき課題は何でしょうか。

    前田先生

    教育現場であれば、大学の方針を決定する立場の先生方がこういった「つながりをつくる」取り組みに意義を感じて、全学的に取り組んでいくべきという判断をしていただかないと難しいだろうと思います。

    内垣戸先生

    本当は大学よりも下の教育にも入っていくといいと思うんですが、限られた時間・資源の中でピアコーチングだけを目的としていくのは難しいかもしれません。アカデミックなスキルの育成場面や各教科の具体的な学習課題などと組み合わせて、実践していくのが良いのではないでしょうか。生徒指導の教材にも活用ができそうですね。

    主体的に動ける楽しさを、学生時代に

    ー新しい変化をつくっていきたい教育関係者に対して、メッセージはありますか?

    前田先生

    大学を選んできてくれた子に対して、より可能性が広がり、進学して良かったと思える子が増えるような教育になっていくといいですよね。

    小中高と頑張って勉強をしてきたのに、それがどう社会に役立つか実感がわかない子も少なくありません。「社会に出ると辛いから、大学は単位をとりさえすれば遊べばいい」といった声も耳にすることも正直ありますが、私自身としては、大学と社会を切り離して考えず、いろんな人とのコミュニケーションを通じて先輩や先生・同僚から学び、自分で主体的に動ける楽しさ、つくっていける楽しさを身につけて、社会に出ても楽しみながら活躍してくれるといいなと思っています。

    そういった環境をつくっていくためにも、ピアコーチングという新しい方法で身近な人との関係を深め、コミュニケーション力を養うことが重要だと思っています。

    ゼミメンバーの集合写真

    若いときに「つながった」体験や、コミュニケーションにおける成功体験は、将来にわたって良い影響を与えるのでは、と感じます。

    みなさま、貴重なお話をありがとうございました。

大学教育センター 前田 吉広先生
メディア・映像学科 准教授 内垣戸 貴之先生
人間文化学部 藤本 悠太さん

[文]櫻本真理

[写真]水主川緑

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