困難や脅威に直面したとき、うまく適応できる人とそうでない人がいます。その違いは何でしょうか?うまく適応できる人は、外的圧力(ストレスなど)に対して反発する復活力や、逆境や困難に負けずに外部環境に順応していく適応力を持っています。この能力を「レジリエンス」と言います。近年、ビジネスの現場で注目されているスキルの一つが「レジリエンス」です。この記事では、レジリエンスの意味や、具体的なレジリエンスを高める方法、そしてその効果について詳しく解説します。レジリエンスとは?「レジリエンス」(resilience)とは、元々は物理学の用語で、「弾力性」「回復力」「耐久性」など、元の状態に戻る力や性質といった意味を持ちます。その後、心理学やビジネスの現場でも使われ、ストレスを受けたときの精神的回復力を指す言葉として広く用いられるようになりました。心理学における意味心理学における意味としては、精神医学のボナノ(Bonanno,G.)博士が2004年に提唱した「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持する能力」という定義が広く用いられています。たとえば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究では、外傷的な経験をした人が全員がPTSDにならないのは、レジリエンスが要因に関係していると考えられています。レジリエンスは、精神的な回復力や適応力を高め、心の弾力性を育むことが求められる心理学の分野で重要なテーマとなっています。ビジネスにおける意味一方、ビジネスにおけるレジリエンスは、個人や組織の不確実性と変化に対する適応力と回復力を指します。個人のレジリエンスは、ストレスへの耐性、問題解決能力、柔軟性、精神的な強さなどを指し、個人が外部環境の変化に順応し、成功と幸福を追求できることを示します。組織のレジリエンスは、危機管理、戦略的計画、リーダーシップ、リスク管理など多岐にわたり、外部環境の変化や競合の影響に素早く適切に対処、適応することができることを意味します。ビジネスにおいて、レジリエンスは持続可能な成長と成功のための重要な要素であり、個人と組織の両方にとって不可欠なスキルとなっています。両方に共通して存在する要素心理学とビジネスの両方において、レジリエンスには4つの共通要素があります。これらの要素は、個人や組織が困難を克服し、成長し続けるために重要な役割を果たします。適応力と回復力: 困難な状況に直面した際に、迅速に適応し、自己の力で回復することがレジリエンスの発揮に繋がります。したがって、個人や組織は柔軟に物事に対処する能力が求められます。逆境での成長力: 逆境に直面した際に、その経験から学び成長する力を培うことで、新たな困難や変化に対応することができます。積極的な対策: 自らが積極的に困難や変化に対処する方法を探求し、計画を立てるなど積極的な行動をすることで、適切な対応力が向上します。内的要因と外的要因: レジリエンスは内的要因(マインドセット、精神的な強さ)と外的要因(市場環境、サポートシステムの有無)の影響を受けます。したがって、これらのバランスを取ることが重要です。レジリエンスを構成する因子レジリエンスは個人や組織が困難を克服し、成長し続けるための力をさします。この力を理解するために、レジリエンスを構成する因子を詳しく見ていきましょう。以下は、レジリエンスを構成する主要な因子です。パーパスの存在、粘り強く前を向き続ける意思個人や組織が明確なパーパス(目標や目的)を持ち、それに向かって粘り強く前進し続ける意思を持つことで、逆境に立ち向かう原動力が生まれます。これにより、困難な状況でもパーパスを実現しようとする強い意志を育むことができます。セルフモニタリングとセルフマネジメント自分自身の感情や行動をセルフモニタリングし、必要に応じて調整するセルフマネジメント能力は、ストレスやプレッシャーへの対処に役立ちます。物事をプラスに捉える姿勢と思考の柔軟性困難な状況でも物事をポジティブに捉え、解決策を見つける能力は、逆境を乗り越えるために非常に重要です。また、プラス思考は変化に適応し、新たなアイデアやアプローチを探求するのに役立ちます。経験学習を活かす力レジリエンスは経験から学ぶプロセスでもあります。過去の失敗や困難から得た教訓を活かし、次回の挑戦に生かす能力は、持続的な成長の基盤となります。経験学習を通じて、個人や組織は継続的に成長できるようになります。横のつながりやサポートの存在友人、家族、同僚、またはメンターなどの他者とのつながりが、困難な時期を乗り越える支えになります。また、周囲と相談したり話したりすることで、困難に向き合う活力を得ることもあります。身体的、心理的なウェルビーイング健康な身体と心はストレスに対抗する力を高め、精神的な安定を促します。バランスの取れた食事、運動、リラクゼーション、睡眠など、身体と心のケアがレジリエンスを高める土台となります。レジリエンスを築く10の方法実際にレジリエンスと高めようと思ったとき、どのような方法で高めれば良いのでしょうか?レジリエンスは、持って生まれた素質だけでなく、誰もが繰り返し意識したり、トレーニングをすることで鍛えることができます。ここでは、アメリカ心理学会(APA)が提唱するレジリエンスを高める10の方法を紹介します。親戚と友人と良好な関係を維持する危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする変えられない状況を受容する現実的な目標をたて、それに向かって進む不利な状況でも、決断し行動する損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す自信を深める長期的な視点を持ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う組織としてレジリエンスが高いことの効果ここまででレジリエンスとはどのようなものか、レジリエンスを築くための方法について分かりました。続いて、組織としてレジリエンスが高いことの効果を詳しく紹介します。1.組織の持続可能性組織のレジリエンスが高まると、組織の持続可能性が向上します。なぜなら、レジリエンスが高いことで、外部環境の変化に柔軟に対応できるからです。2.ステークホルダーからの信頼獲得レジリエンスは、組織を評価する指標の一つとして重視されています。組織が外部の変化やリスクにどれだけ対応できるかに注目されています。レジリエンスの高い企業は、ステークホルダーからの評価が高くなり、企業ブランドの向上や投資の増加につながります。3.競争優位性の構築レジリエンスの高い組織は、経験や失敗から学び、将来に活かすことができます。持続可能な経営を行うことで、長期的な競争優位性を築くことができます。4.働くメンバーの状態へのプラスの影響や離職率低下レジリエンスの高い組織では、社員の心身の健康を維持しやすくなります。社員のレジリエンスが高まることで、ストレス耐性や適応力、回復力が向上し、心身の健康を保ちやすくなります。これにより、離職率の低下にもつながります。組織・チームでレジリエンスを高めていく方法レジリエンスを高めるために、組織やチームが取るべき具体的な方法はさまざまです。以下では、リーダーシップ、メンバーのサポート、トレーニング、コーチングなど、組織やチームがレジリエンスを向上させるためのアプローチとその効果について詳しく紹介します。1.リーダー自身がレジリエンスを高めるリーダーが自身のレジリエンスを高めることで、メンバーにとって模範となり、組織やチームに影響を与えます。・過去に困難を乗り越えた経験を振り返り、その時にレジリエンスが発揮できた背景を考える ・現在または将来のレジリエンスを発揮したいシーンを考える 「10の方法」の中から試してみたいことを意識的に考える(過去に成功した方法に加え、新しい方法も含める) ・コーチング的な関わりで、考えていることを共有する2.リーダーがチームのレジリエンス向上を支援するリーダーがメンバーのレジリエンス向上に取り組むことで、組織やチーム全体のレジリエンス向上につながります。・リーダーがメンバーのレジリエンスを高めるために必要な要素や支援を明確にするために、傾聴を行う ・リーダーがメンバーを承認することで、信頼関係を築きメンバーの自信を深める ・リーダーがコーチング的な質問を使用して、メンバーがレジリエンスを高めるための次のステップを踏み出せるように支援する 3.メンバーにもトレーニングやレジリエンス向上のための実践機会を提供するメンバー自身が、レジリエンスを高めるために必要な要素やスキルを習得するために、トレーニングやワークショップの機会を提供します。参考:レジリエンス強化研修・レジリエンスに焦点を当てたワークショップで、レジリエンスを構成する要素やレジリエンスを高める方法を学ぶ ・ストレス管理に関するトレーニングで、感情の管理や問題解決能力のスキルを向上させる ・コーチングのトレーニングを受けて、コーチング的なスキル(傾聴、承認、質問)を習得し、お互いを支援するために活用する4.レジリエンス向上を目的にしたコーチングを受けるコーチングでは、コーチからの質問や対話を通じてクライアントの自己認識と行動変容をサポートします。コーチングを受けることで、自己認識が深まり、困難に対する向き合い方を探求しやすくなります。・コーチングを受けるテーマとして、直面している困難や将来の困難に対する向き合い方や準備について考えるレジリエンスを高めるための方法を身につけるにはコーチングのコミュニケーションを身につけることで、自己認識を高め、自分と外部環境とのよりよい付き合い方を模索することができ、レジリエンスの向上につながります。CoachEdでは、個人またはチームがコーチングを通じて自己成長や他者の成長を促す方法を学び、習得するサポートを提供しています。CoachEdの特徴コーチングを学ぶ過程で、レジリエンス向上に必要な要素となるマインドセット・スキル・プロセスを学習。実践を行い、自身や他者に対する関わりの現場における定着を目指すことができるコーチングを受けながら、自身やチームのレジリエンスを高める上で必要なサポートを得ていくことができるまとめレジリエンスはストレスを受けたときの精神的回復力を指す言葉として使われており、レジリエンスを高めることはビジネス現場においても効果的です。レジリエンスを築く10の方法に沿って自身のレジリエンスを高めるのみでなく、組織やチームでレジリエンスを高めることによって組織の持続可能性や競争優位性の構築にも役立つことが分かりました。CoachEdでは、所属チームや階層ごとにチームコーチングやチームトレーニングを提供し、コーチングの基礎スキルやマインドセットの習得をサポートします。チームで受講することで、組織の相互に育てあう文化づくりにつながります。また、あなた自身の理想のリーダー像の実現に向けたマンツーマンプログラムも提供しています。トレーナーやコーチが伴走し、個々人の強みを生かした理想のリーダーシップを描くことや、その実現をサポートします。興味をもった方は下記から資料をダウンロードしてみてくださいね。