この記事は、研修の効果測定の具体的な方法やポイントを知りたい人材育成担当者や経営者の方におすすめです。効果的な研修の実施と評価に役立つ情報を提供します。研修の効果測定の意義研修の効果測定は、人材育成施策の目標達成に向けた進捗を確認し、改善につなげるために不可欠です。その意義は、対社外的な意義と対社内的な意義に大別されます。人的資本開示をはじめとする対社外的な意義2023年から人的資本の情報開示が義務化され、企業の人材育成方針や成果を外部に示す必要性が高まっています。リーダーシップ開発や従業員のコンピテンシーなど研修を通じた取り組みの効果測定を行い、投資家などの対社外に対して開示することで信頼を得ることができます。育成への投資対効果を判断するなどの対社内的な意義研修は人材育成への投資であることを考えると、投資対効果の判断や改善を進めることが不可欠となります。また、研修の効果測定は経営への貢献を可視化するものとなるため、人事・人材育成担当者にとっては自身の業務の価値を客観的に示す指標ともなります。もっと詳しく知りたい方はこちら・はじめての効果測定 ー人材育成施策の効果をどのように測るか?ー 資料をダウンロードする・無料相談はこちら研修の効果測定に役立つ「カークパトリックモデル」とは人の成長や変化は複合的な要因の影響を受けるため、研修の効果を測るのが難しいとされていますが、カークパトリックモデルを使うことで研修の具体的な効果を多面的に評価しやすくなります。カークパトリックモデルは、「反応」「学習」「行動」「結果」の4つのレベルで効果を評価し、包括的に効果測定を行います。米国では多くの企業がこのモデルを採用しており、その有効性が認められているため、効果的な研修プログラムの設計や改善に役立ちます。レベル1 反応受講者が教育に対してどのような反応を示したかを評価します。具体例)研修終了後にアンケートを実施し、「この研修は有益でしたか?」といった質問に対する多段階評価や、「良かった点、改善点を自由に記述してください」といった自由記述を集めます。これにより、研修の効果や講師の評価を得ることができ、次回研修の改善材料とします。レベル2 学習研修を通じて受講者がどのような知識やスキルを習得したかを評価します。具体例)研修前と研修後に筆記テストや実技テストを実施し、受講者の学習成果を測定します。例えば、ハラスメントに関する研修であれば、研修後に筆記テストで理解度を確認する筆記テストを行います。レベル1 の反応で「とてもよかった」という回答を得られても学びにつながっているかは定かでないために、本当に学びにつながっているかを評価することを目的とします。レベル3 行動受講者が研修で得た知識やスキルを実際の業務でどのように活用したかを評価します。具体例)研修後の一定期間を経て、受講者の業務パフォーマンスを観察し、具体的な行動変化を確認します。例えば、営業研修を受けた社員が新しい営業手法を使い始めたかを評価します。学んだ内容が業務にどう活かされているかを測定することで、研修の有効性を判断します。学習は成立した(レベル2)が、学んだことがが活用されていない(レベル3)の場合には、なにが阻害要因になっているかを検討するなどして、改善を図ることが可能になります。レベル4 結果研修が組織全体や組織の目標にどのような効果をもたらしたかを評価します。具体例)研修後の組織全体の業績指標や目標達成度を評価します。例えば、営業研修を通じて組織全体の売上が増加したか、顧客満足度が向上したかを測定します。また、投資対効果(ROI)を算出し、研修が経済的に見ても効果的であったかを評価します。組織全体への影響を確認することで、研修の価値を証明します。※参考鈴木克明著, 研修設計マニュアル 人材育成のためのインストラクショナルデザイン(北大路書房、2015)研修効果測定の成功のための6つのポイント効果的な研修効果測定を行うために、以下の6つのポイントに注目しましょう。1. 研修の目標を設定する研修の効果測定が失敗する大きな原因は、目標設定が不明確であることです。SMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限付き)な目標を設定することで、評価の基準を明確にし、研修の効果を測定することができます。2. 所有しているデータを洗い出す研修効果を測定する際には、研修外のデータも活用することが重要です。例えば、業績データや顧客満足度の変化を考慮することで、研修が業務全体に与える影響を把握できます。研修単体ではなく、全体的なパフォーマンス向上に対する影響を評価する必要があります。3. 定性・定量ともに効果を計測研修効果は定量評価と定性評価の両方で測定し、タイミングを工夫することが重要です。定量評価は数値データで、定性評価は参加者のフィードバックや行動変化で評価します。また、研修直後だけでなく、数か月後にも評価を行い、持続的な効果を確認します。4. アンケートやレポート方法を決める研修効果の測定結果を社内で報告する際は、簡潔でわかりやすい資料を作成し、経営陣や関連部署に共有することが重要です。具体的なデータと共に成功事例や改善点を提示することで、研修の価値を理解してもらい、次回以降の研修の計画に役立てます。5. 厳密にやりすぎない研修効果測定では、厳密性を追求しすぎると負担が増大します。適度なサンプルサイズや簡便な評価手法を採用し、負担を軽減しながらも信頼性の高いデータを収集することが求められます。効率的な方法を見つけ、持続可能な評価体制を整えることが重要です。6. データ管理の方法を決める効果測定に使用するデータの機密性を確保することは必須です。個人情報や業務データの取り扱いには十分注意し、適切な権限管理やデータ暗号化を行います。また、収集したデータの用途を明確にし、関係者に透明性を持って説明することが信頼構築に繋がります。もっと詳しく知りたい方はこちら・はじめての効果測定 ー人材育成施策の効果をどのように測るか?ー 資料をダウンロードする・無料相談はこちら「HPIモデル」を活用して課題解決のための研修を計画するHPIモデル(Human Performance Improvement)は単なる研修実施に留まらず、個人と組織のパフォーマンス向上を目的とした包括的なプロセスを提供します。HPIモデルは、6つのステップで構成され、まず「あるべき姿と現状のパフォーマンスギャップを発見・分析」します。次に、このギャップを埋めるための効率的かつ倫理的な施策を立案・実行し、最後に「成果・業績を測定」するというシステム的なアプローチを取ります。この手法により、研修が具体的な業績向上にどの程度寄与しているかを明確に把握できます。ASTD(米国人材開発機構)もHPIモデルを推奨しており、個人と組織のパフォーマンス向上に直結する実効性が認められています。HPIモデルは、研修の効果を測定するだけでなく、組織全体の資源を適切に組み合わせ、介入策を通じて成果を最大化するための方法論として、研修プログラムの設計と評価に大きく貢献します。このため、HPIモデルは研修の効果測定において非常に有効です。ビジネスの分析ビジネスのあるべき姿と現状のギャップを正確に把握することが重要です。企業のビジョンや目標を明確にし、現状を客観的に評価します。担当部署やステークホルダーからのフィードバックなども積極的に収集し、現状分析に活用することで、的確なギャップ分析が可能になります。パフォーマンスの分析あるべきパフォーマンスと現状のパフォーマンスを具体的な指標で評価します。定量的なデータ(売上高、成約件数など)と定性的なデータ(顧客満足度、従業員のモチベーションなど)を併用し、パフォーマンスのギャップを明確化します。実際の業務プロセスを観察し、現場の声を聞くことで、具体的な改善点を特定します。原因の分析パフォーマンスのギャップを引き起こす根本原因を深掘りします。スキル不足、人員不足、資源不足、モチベーションの低下などの要因を多角的に検討します。原因を特定する際には、データの裏付けを取り、表面的な原因ではなく根本的な問題に焦点を当てます。多様な視点から原因を分析し、包括的な理解を目指します。ソリューションの選択原因に基づいて適切な手法を選択します。スキル不足にはトレーニングや研修を、人員不足には採用や配置転換を検討します。手法選定の際には、コスト効果や実現可能性も考慮し、最適な手段を選びます。選択した手法が具体的な問題解決に繋がるように、明確な目標設定と計画を立てることが重要です。ソリューションの実行選択した手法を実行に移します。KGI(重要目標達成指標)とKPI(主要業績評価指標)を設定し、進捗を定期的にモニタリングします。手法の実施過程で、現場のフィードバックを積極的に取り入れ、柔軟に対応します。適切なリソースを割り当て、実施計画をスムーズに進めることが成功の鍵となります。成果の評価手法実施後に短期的および中期的な評価を行います。短期的には、満足度や理解度、行動の変化を測定し、中期的にはKGI・KPIへの影響や手法の浸透度を評価します。定量的データと定性的フィードバックを組み合わせ、総合的な成果を分析します。評価結果をもとに、次のアクションを計画します。まとめ研修の効果測定は、人材育成施策の成功に不可欠な要素です。カークパトリックモデルやHPIモデルなどのフレームワークを活用し、組織の状況に応じた適切な効果測定を行うことで、より効果的な人材育成が可能になります。効果測定を成功させるためには、明確な目標設定、適切なデータ収集と分析、そして継続的な改善が重要です。完璧を求めすぎずに、まずは実行可能な範囲から始め、徐々に改善していくアプローチが推奨されます。効果的な研修と適切な効果測定を通じて、組織の成長と競争力の向上を実現しましょう。もっと詳しく知りたい方はこちら・はじめての効果測定 ー人材育成施策の効果をどのように測るか?ー 資料をダウンロードする・無料相談はこちら